鉄道好きとしておすすめの本
好きを突き進んでるなら、一押しの書の一つや二つはあるわけで、鉄道好きとしての僕のそれは、この本です。
いつ買ったのか憶えていないのですが、繰り返し読んでいます。只見線も五能線もこの本を読んでから乗った気がするので、多分、高校生くらいの時でしょうね。
既に絶版で中古1円ですか。そうですか。もっと早く紹介しておけば良かったです。w
まあ、確かにガイド雑誌のシリーズものなのですが、中身のクォリティが只物ではないです。まず写真。鉄道好きなら分かるはず。各路線の冒頭では遠景からの車両を描写し、各ページでは乗客や鉄道職員の顔をクローズアップしているので、旅情を感じます。そして、記事がまたしびれます。例えばトップバッター「宗谷本線」を書いた、吉田耀子さん
“究極に寂しい旅”、というヤツをしてみたい。
そんな考えが浮かんだのは、年の暮れも押し迫ったある日のことだった。
“冬”“寂しい”と来れば北帰行、と昔から相場が決まっている。札幌に帰省中だった私は、「最果ての地」稚内めざして宗谷本線を北上することにした。年の瀬に一人雑踏に背を向けて北をめざす。自分がまとうであろう孤独の影を思い、私はのイメージに陶然とした。
12月30日の朝、札幌からL特急で旭川に向かった。ここまでが函館本線である。
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…………省略…………
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…………北上すると、名寄である。ここで稚内行きの各駅停車に乗り換えるのだ。
これが実に、1両きりの、押しも押されもせぬ“ローカル線”なのである。この可愛らしい鈍行は180kmもの道のりを、一針一針縫い目を数えるように北上していくのだ。まるで、宗谷本線という1本の枝をノロノロ這い上がるカタツムリではないか。でっかいどお、北海道。
いきなり、肝を抜かれるようなこのテンション!書き手の吉田耀子とは何者なのかと思いました。
記事ではさらに、ハイテク機器携帯電話を使いこなすジイチャンが登場し、さらに、出発前にカメラマンから聞いた「ハンパじゃない」寒さを味わうために、抜海から南稚内までの一駅を歩くという暴挙に出るが、40分ほど歩いたところで、地元の人の親切で車に乗せてもらう。そして、
「究極の寂しさ」を求めて北へ向かえば向かうほど、そこからどんどん遠ざかっていくのを私は感じていた。
と締めくくっている。
どうです?今すぐ宗谷本線に乗って稚内に行きたくなったでしょ?そう思わない?
宗谷本線のようなエネルギーはこれきりですが、他の24路線も味があります。10年前の本なのでちょっと情報が古いですが、そこがまた良い!
この一冊を読んでいると、僕が高校生の頃所属していた「旅行研究部」という部活を思い出しました。実体は写真部や鉄道研究部やクイズ研究部がごった煮になって、各々勝手に旅行記を書いて、年に数回冊子を校内に配っていたのですが、とても楽しい思い出でした。高校生のアマチュア活動とプロの活動を比較するなんて失礼もいいところですが、この本はその活動のお手本のようだと思います。きっと企画から出版されるまで大変な道程を経て世に出てきたのでしょう。しかし、楽しそうだなと思ってしまいます。
是非図書館で見つけたら、読んでみてください。オススメです。あるいはAmazonで1円で買ってみるとか(^^)